お2人の魅力を知れば、8/19~20に行われる王位戦・第4局が楽しめると思い、私の熱量そのままに書きます(^^)
あまり将棋に興味がなかった人も、読んでもらえたら嬉しいです。
王位戦は、これまで藤井棋聖の3勝0敗です。
次回の王位戦・第4局にて。
藤井聡太棋聖が勝てば王位獲得で最年少二冠!
木村一基王位が勝てば、1勝を返せます!
そんな見どころたっぷりの王位戦・第4局。
藤井棋聖のファンの私ですが、今回ばかりはどちらが勝っても嬉しいし、悲しい。
その想いが、誰かに伝われば、嬉しいです。
木村一基王位
プロ棋士であれば、誰もが目指すタイトル。
トーナメントを勝って、勝って、敗退し。
勝って、勝って、また敗退。
その繰り返しで、タイトルを1度も取れずに引退する棋士がほとんどです。
年間4人しか、プロ棋士になれない厳しい世界ですが。
念願のプロ棋士になれても、夢が叶わないまま終わる棋士の方が、多い。
そんな中、木村一基王位はタイトル挑戦からの敗退を6回経験しています。
あと1勝で獲得、というチャンスも何度もありました。
「負けと知りつつ、目を覆うような手を指して頑張ることは結構辛く、抵抗がある。でも、その気持ちをなくしてしまったら、きっと坂道を転げ落ちるかのように、転落していくんだろう。」
木村一基王位の有名な言葉です。
執念で勝ち取った「王位」の座。
7度目の挑戦での最年長初タイトル。
2019年のインタビューでは、こんな事を言っています。
ひとつだけいえることは、今年に入ってから研究の時間を大幅に増やしました。外出したときの10分程度の空き時間も、頭の中で戦術を練ったり。起きてから寝るまで自分でもいやになるくらい勉強を続けたことが、いい方向に出たのかなって。
これこそ、木村一基王位!
起きてから寝るまで自分でもいやになるくらい勉強を続けた!!!
さらっと言っていますが、どれだけの努力がその裏にあるんだろう、と。
王位戦第3局では、解説の行方尚史九段が『攻めに使いたい銀を、じっと我慢して自陣に打ち込む耐える一手』を見て、こう言っています。
「ここに銀は使えない。耐え難きを耐える。そのひとこと。そういう精神があるから木村は強いんです。この銀を打てる人はめったにいない」
「藤井棋聖も、これを指せる人と指したことがないんじゃないですかね。この執念で俺は生きてきたって感じがします」
執念の一手でした。
この一手からの頑張りで、逆転か!?というところまで迫りましたが、惜しくも敗れました。
木村一基王位の座右の銘は、「百折不撓(ひゃくせつふとう)」。
木村王位が、色紙や扇子によく揮毫される言葉です。
意味は、何度失敗しても信念を曲げないこと。
まさに、木村王位の折れない心を象徴しています。
どれだけ失敗しても、決してくじけない百折不撓の棋士。
それが木村王位です。
木村王位の解説は、素人にも分かりやすく、ユーモアもたっぷり。
まるで漫談のようです。
木村王位が解説をされると決まれば、見ている私はヤッター!といつも思います。
優しくて、気遣いの人でもあります。
王位戦の封じ手を、豪雨災害のチャリティーに役立てる事を提案したのも、木村王位です。
悲願の初タイトルを奪取した時、家族への言葉をインタビューで聞かれ、涙した木村王位。タイトルを取れなかった6回目の挑戦の時は、奥さんも泣いていたと、王位獲得後に娘さんから聞いたそうです。
タイトル獲得は、家族にとっても悲願だったのだと思います。
やっとの思いで獲得したタイトル。
1勝も勝てずに、取られるのを見るのは、辛い。。。
相手が藤井棋聖でさえなければ、木村王位を全力応援していました。
藤井聡太棋聖
数々の最年少記録を塗り替えていく、藤井棋聖。
私が最も「恐ろしいな」と思ったのは、朝日杯の対局直後の会場でのインタビューでした。
2018年2月17日。
15歳の藤井聡太五段。中学3年生の頃ですね。
公開対局なので、何百人もの観客の前で指します。羽生九段(当時竜王)が相手で、神のような存在相手に、最初は萎縮してしまう棋士もいます。
そんな中勝利し、局後のインタビューで「緊張しましたか?」という質問に。
ニコニコ照れ笑いをしながら、いかにも緊張しているような仕草で。
「ほどよい緊張感の中で指すことができました」
って言っていました。
まだ中学生!
何百人もの観客!!
たくさんのマスコミ!!
相手は羽生竜王!!!
ほどよい緊張感!!!
脅威の精神力です。衝撃でした。
史上最年少プロ棋士、29連勝、最年少棋戦優勝、最年少タイトル獲得、と次々と記録を塗り替えている藤井棋聖ですが。
中学生の頃から、常に「記録は気にしていない」と答えています。
そして、本当に気にしていないんだな、と思えるような、のびのびとした手を指しています。
悲観しすぎ、又は勝ちを急ぎすぎて暴発したり。
安全勝ちを目指しすぎて、勝てる将棋が混戦になったり。
そんな事がほとんどない。
目の前の「最善の一手」だけを追求している。
そんな感じがします。
王位戦に向けては「一手一手最善を追求して、見ている人にも楽しんでもらえる将棋を指せたら」と話しています。
また、「自分の棋風をどう思うか」という質問に対しては。
うーん、棋風というのは、自分で意識してしまうとそれにとらわれてしまうというか、縛られてしまうところがあると思うので、自分としては棋風はあまり意識していないです。ただ、見ていただく方にとっては、特徴のあるおもしろい将棋が指せればと思っています。
と、答えています。
迷ったら攻め、迷ったら受け、といった棋風にとらわれず。
記録にもとらわれず。
勝利も意識せず。
敗戦も引きずらず。
観客も。
マスコミも。
プレッシャーすら意識せず。
ただ、最善だけを追求できる。
中学生の段階でそうなのですから、同じプロ棋士から人生何周目なんだと言われるのも納得です。
2017年7月(中学3年生)でのインタビューでは
「相対的というより絶対的に強くなりたい」と言い、
同じく2017年の神社へのお参りテレビ映像では
「将棋のことで神様にお願いしてもしょうがないので兄の(大学)合格を祈願しました」
と答えています。
2019年(高校2年生)でのイベントでは
「将棋の神様にお願いするなら、なに?」に対して、
「せっかく神様がいるのなら1局、お手合わせをお願いしたい」
自分の中学生の頃を振り返ると、価値観も甘く、黒歴史になるような言葉も言った事がある気がするんですが。
藤井棋聖は全くブレません。
強くなりたいという純粋な気持ち、そのままです。
また、謙虚なところも、大きな特徴の1つです。
他のプロ棋士も、いつも解説等で「謙虚」だと語っています。
インタビューでも常に謙虚で、今回の王位戦でも、「木村王位の力強い指し手は非常に勉強になる」とインタビューに応じていました。
相手の学べるところは全て学ぶ。
そんな謙虚な性格だからこそ、サイヤ人のように驚異的なスピードで成長していくんでしょう。
相手のいいところを全て吸収しながら、対局を重ねている感じがします。
追っていると、分かりやすく強くなっていくんです。
勝勢の将棋を粘りに粘られて負けた将棋の後から、負けにくい手や、上手く粘る手等が多く現れて「あの対局で覚醒した」と言われたり。
横歩取りという戦法で負けが続くなぁと思ったら、朝日杯において、それを得意とする名人に横歩取りで圧勝したり。
脇システムと呼ばれる戦法で広瀬八段に非公式戦で敗れた後に、脇システムをタイトル戦で採用して勝ったり。
弱点だと思ったか?
残念、もうそこは克服済みだ!!!
と天からそんな台詞が聞こえてきそうなくらい、強くなっていきます。
まさに、少年漫画のヒーローそのものなんです。
将棋に対するスタンスも
「研究といってもまあ、自然にやるのが一番かなと思ってます」
とインタビューで答えています。
努力!!!ではないんですね。
2018年のインタビューでも
「意識的に取り組んできたことではないんです。好きだから自然に続けてきました」
と、言っていますし。
タイトル獲得後も
「自分としても、好きなことに夢中で取り組んできたというのが、ここまでつながったのかな、というふうには感じているので」
と、語っています。
2019年のインタビューでは「才能型、努力型どちらですか」という質問に対して
「環境を与えてもらえた」というまさかの第三の回答でした。
AかBどちらだと聞かれても、自分がCだと思っていればCだと答える。
なかなか若くしてできる事ではありません。
真摯で誠実、思ってもいない事は言わず、妥協もせず、信念を持った人物です。
この人の言った事なら信じられる、と思えるんです。
高校生ですけどね!!!
純粋に将棋が好きで。
将棋を研究している時間すら、努力だとは思わず。
盤外の事は意識せず、最善の一手を追求し。
決してブレない。
数々の記録を更新しながらも、謙虚で。
謙虚でありながら、卑屈にはならず。
真っ直ぐに、絶対的な強さを目指す。
ここまで将棋が強くなる気質を持った人間は、もう二度と現れないかもしれない。
将棋の神様に選ばれた、奇跡の子だ。
そう、思うんです。
その上、読みのスピードが他の棋士と比べ、段違いのようです。
詰将棋解答選手権は、5連覇。
その解答スピードを、優勝もした事のある斎藤慎太郎八段は
「今は多分、僕の3倍ぐらいのスピードで解いています。僕が2問目を解き終わったときに、彼は6問目を解いている、そんな速さです」と語っています。
普段の対局でも、渡辺二冠に
「こっちは全く気が付かないのに相手は全部読んでるってことがあるのかな」
と、ブログで言わせるほど、相当な手を短時間で読んでいるようです。
棋聖のタイトル獲得の後では、相手である渡辺二冠がブログで
「第1局は▲13角成から一気にスピードアップで「えっ、それで寄ってるの」とか思ってる間に負け、第2局は△31銀で手がありません、と。そして今回は中盤でピタッと追走されて△86桂で抜き去られる。と、負け方がどれも想像を超えてるので、もうなんなんだろうね、という感じです」
と、書いています。
ここまで将棋に特化した気質と資質を兼ね備えた人物は、二度と現れないかもしれない。
そんな奇跡の子が、同じ時代を生きている!
ならばもう、絶対に誰も越えられない記録を、次々と打ち立てて欲しい。
圧倒的存在になっていく様を、生きている限り、見ていたい。
それが、私が藤井棋聖を応援する理由です。
私が、公開対局や将棋祭、杉本師匠のサイン会や講演会に行く理由です(笑)
もちろんそれは、藤井棋聖が強くなる事を望んでいるからでもあります。
絶対にないでしょうが、他の道に進みたくなる事があれば、きっとその道を応援します。
どうか、幸せな人生を歩んでほしい。
笑っている顔を、見ていたい。
その想いが、根底にあります。
最後に
そんな訳で、今回の王位戦、私は2人を応援します。
藤井棋聖が負けるのも、見たくない。
でも、木村王位が負けるのも、辛すぎて見たくない。
藤井棋聖が勝ったなら、最年少二冠を達成し、伝説の一幕だ!と嬉しいですし。
木村王位が勝ったなら、まずは1勝おめでとう!と心から喜びます。
8月19日・20日の2日制の対局です。
私はガッツリ全て見ますが、20日午後から面白くなると思います。
愛が深すぎて長文になってしまいましたが、実はまだまだ語りたい事はたくさんあります。頑張って短くまとめました(笑)
ちらっとでも興味を引いたなら、嬉しいなと思います。